このバッハのフルートソナタ集を、スタンダードに薦める方も多いと聞くが、それも納得のいくものである
全体にふくよかで厚みのある、アナログ時代の芯のしっかりした音だと思う
バロックと言えば、朝の音楽のイメージを浮かべてしまうが、音量を絞ってもしっかりと音が前に出て来るので、朝の寝起きの一時のBGMにもマッチしていると思う

グラーフのテクニックに関しても、ヴィヴラートの控えめな、とても素直で飾り気のない演奏で、フレージングや息継ぎとも完璧に近く、全く不満を感じさせない
同曲では、レコードアカデミー賞受賞盤のランパル＆ピノックのものを１番先に購入していたが、特にBWV.1033や1034辺りで、ランパルの息継ぎがどうしても苦しく聴こえていて、次にニコレ盤を聴いた際にそれが払拭されていた

今回のこのグラーフ盤。。更に余裕で吹きこなしているのを聴いて流石だと感じた
それでいて、テクニックを前面に押し出している感が全くない
タンギングのハッキリした几帳面な音運びだが、堅苦しさを感じさせないのは、この人の音楽には、『歌』があるからだと思う
それは、叙情楽章で更にハッキリする

多くはチェロで奏される通奏低音は、ファゴットである
これが、非常に画期的な個性を演出している
奏者のザックスのリズム感と同調性が素晴らしい
バッハの厳粛性を、多少なりとも親しみやすいものにしている点がユニークだと思う
デーラーのチェンバロの音も、ギスギスせず、同じくアナログ的で柔らかい

返す返すも、最初にお薦めのバッハのフルートソナタ。。成る程と思わせるものがある
86年発売当初、3200円で出ていたCDの価格も、現在では非常にリーズナブルで求めやすい