日本合唱曲全集 團伊玖磨作品集
久しぶりにCDラックから引っ張り出してみた。
岬の墓は10分以上かかる当時としては長い曲なので、
歌う立場としてはテンションを保つのが大変なのだが、なんか・・・途中で飽きてしまった。
筑後川、、、。今でも日本各地の合唱祭で「河口」は全員合唱で演奏されているのだろうか。
それだけだとしたらもったいない話だ。明確な構築性のある日本で最初の合唱組曲なのだから。
大地賛頌も似たような扱いを受けているのだろうか。
いまさら土の歌を定演でやるのもなあ・・・という声が聞こえてきそうだ。
海上の道、、、。録音が旧いのは仕方がないとして、作品自体も風化しつつあるような気がした。
辻先生も團先生も既に物故し随分と経つ。
聴き終えてから、懐かしいような、むず痒いような不思議な感覚が残った。
もう少し経ってからまた聴いてみようと思う。また新たな発見があるかもしれないから。
収録曲の生演奏に触れる機会は、おそらく今後殆どないかもしれないから。
定家明月記私抄 (ちくま学芸文庫)
紀州路、熊野街道では王子社の多くに明月記からの抜粋資料が掲示されています。 これを読みつつ足を進めるうちに、後鳥羽院の随員のひとりになったような気分になってきます。 藤原定家は、後年、正二位、権中納言まで出世し、後世には小倉百人一首を残し、現在もなお歌道の名家として残る冷泉家の祖としても名を残しました。
しかし、その定家も後鳥羽院の熊野詣に随行したときには四十歳、ようやく前年に昇殿を許されたばかりです。自分の子どものような少将どもと混じり、情けなさに身の不運を嘆いたり、、院のわがままに振り回され、咳病など持病をおしての宮仕えの苦労もあるなど、800年前の官僚の日記が身近なものに思えてきます。文明は進んでも人間のやっていることというのは、たいして変わらないものだということをあらためて感じさせます。
日本合唱曲全集「岬の墓」團伊玖磨作品集
数ある團伊玖磨の合唱曲のなかでも「岬の墓」は屈指の名曲である。
この曲の歌詞は、船出する美しい船を岬の白い墓が見守る、という単純かつ和やかなもので、
十分ほどの演奏ながら、曲調は非常に変化に富んでいる。
男声部のやや低めで印象的なハミングのメロディから始まり、
その後は「今、過去、未来」を順に見つめるように、明瞭に曲の雰囲気が変化していく。
現代日本の合唱曲にしては古典的なクラシックらしい曲の構造を持ち、
安定感と荘重さにおいては、おそらく他の合唱曲の追随を許さないであろう。
辻氏が指揮するクロスロード・アカデミー・コーアの演奏は、人数編成は多くも少なくもないものの、
表現の豊かさと演奏の一体感において、とても素晴らしいものを聴かせてくれる。
このCDにはほかにも定番曲の「河口」も入っており、申し分ない内容と言える。
方丈記私記 (ちくま文庫)
古典をどう読むか?著者も言われる様に、日本の古典とは、例えば高校で古典文学の授業で読まされる物には、その真の読み方を知らず、唯だ、試験の為に相も変らぬ、文法や古語の記憶に終始し、古典の持つ真の迫力を知る事無く終わってしまう。こんな無味乾燥な授業しか体験の無い生徒は、方丈記と言っても、やれ、「行く川の流れは絶えずしてもとの水にあらず、淀みに浮かぶうたかたはかつ消えかつ結びて・・」伝々で、現在とは関係の無い記録として通過してしまうのが常であろう。
だが、しかし本気で読んで見たまえ、何と緊迫感にあふれた文章であろうか!彼の描く様々の災害・飢饉・大風・大水・などは、彼の若い頃に見た記憶であるが、何十年も前の情景を、実にリアルに、リアリステックに描き出す文章は、只者ではない。京の町が炎で灰燼に帰す、合流火災の凄まじさは、東京下町を焼き払ったアメリカ軍の無差別爆撃の恐怖と、重なるものを思い起こさせるだろう。鴨長明は音楽、特に琵琶の名手であったという。文章の素晴しさは、彼の美的感受性の反映であろうし、この大いなる過酷な事態は、トテモ、はるか遠い時代の事とは思えぬのである。いつか我々に襲い掛かる災害が、この長明の描く世界とそっくりの地獄を作り出す事は、大いに有ると思ったほうがいい。人間は、そこで果たして、如何なる振る舞いを為すのであろうか?
堀田善衛氏のこの本「方丈記私記」は、古典である「方丈記」を「同時代」の事として読むことを教えている!「同時代」として読んだ時にこそ、この本の本当に恐るべき真価が理解される。堀田氏は、方丈記を敗戦間近の東京大空襲の記憶と重ね合わせた、同時代ドキュメントとして読み、当時の鴨長明氏の心境まで髣髴とさせる程の、素晴しいものとされている。おそらく、このような事態は、仮に、東京大震災、東海大地震、などが、起こった際には、当時と同じ地獄絵図として、繰り返されるに相違ない。
有名で有りながら、真髄が多くの人々に知られる事の無かったこの古典を、画期的に解釈する「方丈記私記」は「方丈記」と共に、高校生に是非読んでほしい本なのです!それは、惹いては堀田善衛という、極めて個性的で、類稀な、良質な作家を知る機会にも成ると思うからです。