赤ちゃんをさがせ (創元推理文庫)
赤ちゃんが産まれる、というだけでほんわりあたたかい気持ちになりますが、そこに楽しいドタバタミステリーがからんで、素敵な作品です。たしか、ドラマ化されていたと思うんですが、そのときは見なかったんですよねえ。原作がおもしろいから、ドラマはどんなだったかなあと思います。見ればよかったなあ。
「お母さんをさがせ」「お父さんをさがせ」「赤ちゃんをさがせ」と3つの話が続く連作短編になっています。どれも作者のあたたかさが伝わってきます。主人公の亀井陽奈はかけだしの助産婦。人生経験もまだまだ足りないひよっこだけど、好奇心は人一倍だし、優しさも人一倍。このままたくさんの経験を積んでいったらそれは素晴らしい助産婦さんになるだろうなあと思わせるキャラクター。そして自分も子どもを育てながら独立開業した児玉聡子。陽奈の尊敬すべき先輩です。まじめで仕事には厳しい。助産婦という仕事に傾ける情熱に好感が持てます。
そんな二人が困ったときに相談に行くのが、助産婦としても人生の先輩としても尊敬する明楽先生。先生に様々なヒントをもらいながら、2人が事件を解決していきます。
たまにはこういう、血の流れないミステリーもほのぼのしていいものです。
赤ちゃんをさがせ (クイーンの13)
この本は、とてもユニーク。まず、タイトルからして不思議だが、妊婦が主人公で、助産婦が探偵なんてミステリー、ほかではあまり聞いた事がない。お産は確かに神秘的でミステリーだが、今にも赤ちゃんが生まれそうな妊婦さんが、秘密や謎をもっており、それを助産婦が探偵のごとく解決していく3作の連作短篇。ミステリーだが、そこには殺人は出てこないし、最後には赤ちゃんが生まれてハッピーに終わるというのも、いい雰囲気である。とても読みやすく楽しい小説だが、解決に至る伏線もしっかりと織り込まれており、なかなかよくできた小説だと思う。