八甲田山 特別愛蔵版 [DVD]
素晴らしい名作です。しかし今やスターウォーズの旧三部作がそれぞれリニューアル版とオリジナル版の二枚組を三部作まとめて買うと三千円ぽっきりという時代です。日本の映画会社各社は日本の映画が魂を持って製作されていた80年代初頭までの名作の数々を、リアルタイムを知らない若い世代に普及させる気概を持っていないのでしょうか?八甲田山は近くのTSUTAYAにも何故か置いてありません。また新田次郎原作の映画なら「聖職の碑」も見たい。もう少し家族に遠慮しないでお小遣いでも買える程度の価格でお願いします。旧作なんだから。日本映画もいつか安い価格でのソフト化がなされると期待して、かれこれ何年たったやら…。いい加減に真面目にマーケティングリサーチすべきです。この様な名作に、あえて星3つをつけてまで言いたいのはそれだけ。
劔岳 点の記 メモリアル・エディション [DVD]
これはもうほとんどドキュメントのようです。
重い荷物を背負い山を登る姿は演技を超えています。
自らの任務を遂行しようと、ひたすら雪山の頂きを目指した不屈の男達。
雄大な自然の美しさ、そして最後は初登頂を競った相手もお互いを認め称え会う。
エンドロールの「仲間たち」の文字の下にスタッフ、キャストの名前が並んで続く。
苦行の日々のような撮影の現場だったそうです。
強い絆で皆が繋がっていたのですね。
誇り高き仲間たちに拍手です。
孤高の人 17 (ヤングジャンプコミックス)
1巻から今回の最終巻まで続けて読みなおしました。
初期の頃はストーリーが安定しない感じでしたが、
北アルプス縦走からは本当に物語にひきこまれます。
友人の事件から心を閉ざし、新しい地で人とのふれあいを取り戻し
そのために仲間を傷つけることになり独りで生きることを選ぶ。
自分と行動をともにした者は消え去る。
その中で自分を慕う者に出会い、その関係は時に歪ながらも同調し
最大の目標であるK2に共に挑むも、同行者は命を失う。
そして文太郎は単独でK2東壁に挑む。
ここからの描写は素晴らしいです。擬音とか皆無でも山の寒さとか雪崩の重さを感じさせてくれます。
ザイルを失い絶望的状況に追いこまれてからの展開はすざましいです。
最後の最後に文太郎を導いたのは「あの娘」でした。
ここの場面は原作を知る者には奥深かく感じると思います。
終わり方には、賛否両論あるようですが、自分の感想は素晴らしい閉め方だと感じました。
最終巻のコラムは加藤文太郎氏でした。
このあたりも良いと感じました。
この作品は生きることへの力を与えてくれる作品です。
八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)
朝日新聞の日曜の書評欄に筒井康隆氏が、娯楽小説としは超一級の作品であると絶賛していた。そこで僕も30年ぶりに再読してみた。そこで気がついたのは、これは筒井氏が言うような超一級の娯楽小説では決してないということだ。超一級ではあるが、娯楽小説ではない。
当時、「天は我々を…」という言葉と共に、映画が大ヒットし、テレビドラマ化もされた。青森と弘前の各歩兵聯隊の挫折と成功を、その聯隊の規模や指揮系統、装備などであると僕らは理解し、それでこの壮絶な悲劇を理解したつもりでいた。しかし今、あらためて読み返してみて、なんと大きな物を見落としていたのだろうと、自分の不明を思い知らされた次第だ。
これは壮大な娯楽小説であると共に、非常に精緻な記録小説でもある。それは序章以降、物語の進展の随所で、原典にあたる青森歩兵第五聯隊編集の「遭難始末」の原文を引用していることからもわかる。つまり、リアリティーに徹しているのである。たしかに小説である以上、多少の脚色も必要だったと思うが、日露戦争前夜の帝国陸軍の苛烈さは、この小説に描かれている通りである。解説にあるように、案内人を雇う徳島大尉(高倉健)は、任務に当たっては非常に厳格であるが、女案内人のさわ女(秋吉久美子)との別れに際し、捧げ銃の号令をもって遇する、などという牧歌的な逸話は原作には無く、目的地直前に彼らには五十銭硬貨を与え、軍の最後尾につかせる。民間人に先導されるというのは、当時(現在でも)の国家権力としては、言語道断だったのである。
最終章で、遭難事故の事後処理について、かなり詳細に描かれている。その中で、第八師団長、つまり青森、弘前の各聯隊の所属する師団の最高司令官である立川中将の、感動的な台詞がある。青森第5聯隊の199人の犠牲は、決して無駄死にではない。これよりロシアとの戦争に際し、酷寒と雪への対策を、中央の精神主義に凝り固まった高級官僚達に思い知らしめる結果となったのだ、というものだ。これには僕は大いに感動した。これから迎えるロシアとの過酷な戦いとその勝利を思うと、胸が熱くなったものだ。ただしかし、それに続く数ページで、政府と陸軍の国民感情の操作、皇室を利用した世論の押さえ込みを読んで、暗澹たる思いがした。皇室による将校以下の遭難者遺族に対する、祭祀料の下賜。それに対して階級による差別があるとの遺族の不満。またそれに対し、陸軍省が議会に要請した遺族に対する一時金を、前回の祭祀料よりも階級による差を小さくしたこと。立川中将の、この悲劇に対して締めくくった美談も、その後の国家と遭難者遺族、あるいは国民世論との遣り取りで吹き飛んでしまった思いがした。そしてそれ以降、重大事故の遺族と国家賠償という構図は、このような形で繰り返される。事故自体にどのような事情があろうとも、犠牲者達の美談と遺族の悲憤は決して相容れることは無いのだ。
ただ明治の日本は意外と自由な空気が漲っていたのだと思った。本当の暗雲は、昭和の軍部の独走から始まるのかもしれない。
聖職の碑 [DVD]
母の勧めで見ました。
あまり説明がうまくないのですが、
山の荘厳さを学ぶには最適かつ有益な作品だと思いました。
山は人に色々なことを教えてくれます。
ただ漠然と見てもいい作品だと思いますが、生きることへの
一つのテーゼを感じ取るように見てもらえればと思います。