なんという美しさでしょうか？

ホロヴィッツの全盛期の頃の身震いするような恐ろしさは影を潜め、邪心のない慈愛に満ちた優しい演奏があまりにも魅力的です。特にショパン　エチュード　ｏｐ．２５−５の優しく語りかけるような演奏を聴くと、死期が間近に迫っている事を悟っていてファンの為に最後の録音を残してくれたように聴こえ、涙が溢れそうになります。

スタジオではなく自宅に機材を持ち込んでの録音だったそうで、スタジオ録音に比べると若干音がくぐもった感じがしますが、ステージ上のホロヴィッツではなくプライベートのありのままのホロヴィッツに身近に接するような感動がこのＣＤを一層魅力的なものにしています。

どんなに音色、テクニック、録音技術を極めても、この美しさ、優しさはホロヴィッツただ１人にしか出せないと確信します。