LOVE CENTRAL(初回限定盤)
いいアルバムだと思います。
限定版のレビューが多いのは、発売日に買う人は熱心なファン(?)が多いからでしょうか。
なんというか、日本のポップス(の一部)における、さいきんの流れとして、「否定感情」の肯定、というか受け止めがあると思います。
ええと、100%のポジティヴって気持ち悪いじゃないですか。鶴見済の受け売りですが。
「くたばれ フレフレとか がんばれとか」(@ECD)ってことで。
全部じゃないけど、J-POPの、ポジティヴ一辺倒の流れが変わりつつあるなかで、象徴的な盤だと思います。
だって、曲名からして「ANOTHER JUNK IN MY TRUNK」に、「POISON CENTRAL」ですよ!?
「生きてゆくのです」も、明るいけど切ない曲だし。
音楽性も、バラエティ富んでますね。
M-8のピコピコ感、好きです。Perfumeというより、エレクトロという感じ? よくわかりませんが(笑)
また聞き込んだら、レビュー書き直すかも、です。
化粧槍とんぼ切り
森雅裕さんは商業出版に対してどこか超然とした姿勢を貫いておられる現代の出版界では珍しい作家です。本作も2000年の初刷でやや古いのですが単行本で入手できます。
家康四天王の一人といわれた本多忠勝の娘、稲が謀略知略で知られる戦国武将、真田昌幸の嫡子信幸に嫁入りします。嫁入りに際し、忠勝の愛槍、とんぼ切りを嫁入り調度として所望します。ところがこの槍が二代目千子村正の直弟子で時に師匠の代わりに鍛えた刀に村正の銘を穿つこともあった伊勢の刀工正真の作であったことが問題になります。世に言う妖刀村正です。家康の祖父、父が村正の銘のある刀で殺害されただけでなく、家康の長子清康の自害の際の介錯に使われたのも村正であったため、村正銘の刀を所持していれば家康に対して意趣ありと見なされる忌み刀になっていました。
この槍が稲の嫁入りの直前に盗まれます。それを知ってか、大阪への出発を延ばした家康は忠勝にその槍を見たいと言い出します。見せられなければ村正を隠し持っていることになるでしょうし、見せて村正とわかればそれこそ一大事です。これは台頭してきた文吏派の本多正信が武闘派の雄、本多忠勝を追い落とそうとした策略だったのです。この場は稲の機転で事なきをえるのですが、その後も村正は、大阪方についた昌幸や幸村に散々苦汁をのまされた徳川秀忠やその忠臣一派から真田追い落としの材料にされ続けます。そのたびに男勝りの稲姫(嫁いでは小松殿)の小気味よい活躍で大事には至らないですみます。ただ作者の描きたかったのは村正妖刀伝説でなく、その折々に登場する武将達の男振りの良さであったのでしょう。
刀剣に関する作者の深い含蓄に裏打ちされた読み応えのある作品です。家康体制における幕閣の覇権争いを下敷きにしながら、史実をなぞるだけの退屈な歴史小説ではなく戦国に生きた武将や女達のまことに魅力的な生き様が見事な人間ドラマに仕上がっています。