アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ
イランの映画監督で、モフセン・マフマルバフという人が
書いた本です。日本でも「カンダハル」が上映されました。
「私はヘラートの町の外れで二万人もの男女や子供が飢えで
死んでいくのを目の当たりにした。彼らはもはや歩く気力も
なく、皆が地面に倒れて、ただ死を待つだけだった。この大量
死の原因は、アフガニスタンの最近の旱魃である。同じ日に、
国連の難民高等弁務官である日本人女性もこの二万人のもとを
訪れ、世界は彼らの為に手を尽くすと約束した。三ヵ月後、
この女性がアフガニスタンで餓死に直面している人々の数は
百万人だと言うのを私は聞いた。
ついに私は、仏像は、誰が破壊したのでもないという結論に
達した。仏像は、恥辱の為に崩れ落ちたのだ。アフガニスタン
の虐げられた人々に対し世界がここまで無関心であることを
恥じ、自らの偉大さなど何の足しにもならないと知って砕けた
のだ。」
「バーミヤンの仏像の破壊は、世界中の同情を集めた。しかし
何故、国連難民高等弁務官の緒方氏を除いて、このひどい飢饉
によって死んだ百万人のアフガン人に対しては、誰も悲しみを
表明しないのか。」
「現代の世界では人間よりも仏像の方が大事にされるという
のか。」
「仏陀の清貧と安寧の哲学は、パンを求める国民の前に恥じ
入り、力尽き、砕け散った。仏陀は世界に、この全ての貧困、
無知、抑圧、大量死を伝える為に崩れ落ちた。しかし、怠惰な
人類は、仏像が崩れたということしか耳に入らない。」
大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか
前作『戦争広告代理店』がNスペの焼直しにしては面白かったので期待して買ったのですが、今回は「まさにノベライズ」という感じで、テレビを見ているかのように、たいして印象に残らないまま読了してしまいました。
内容も、タリバーン政権がいかにビンラーディンに乗っ取られたか、という今となっては衆知の話です。たしかに、ネタは2003年6月と9月放送分なので、古臭いのも当然といえば当然でしょう。
でも、だからこそ「新事実が出てきたわけでもないのに、なぜ今頃出版?」という思いは禁じ得ません。読んだ時間を返せと言うほど悪い出来ではないですが、衝動買いしてしまったのをちょっと後悔しています。