Brilliant Trees
ソロデビューアルバム。シルヴィアンはその後活動の幅を広げていき
ますが、自分にとってはこのアルバムこそがベスト。うれしいことに
長年待っていたリマスター版がリリースされました。日本盤をはじめ
としてCCCDでのリリースになっていますので、気をつけたいところ。
長年、ブリリアント…は音質の面でかなり不満があったので今回のリ
マスターは本当にうれしい。一番好きなアルバムなだけに。
坂本龍一氏の参加もこのアルバムの重要な骨子になっていると思う。
それからポップな面だけでなく、彼のアンビエント志向が一番素晴ら
しい形で萌芽したタイトル曲の「ブリリアント・トゥリーズ」。
瞑想的。
シルヴィアンで何を聴いたらいいか分からない人には、このソロデ
ビュー盤と、現時点での最新アルバム「Blemish」をお薦めします。
ここ数年、もう活動も落ち着いてきて、あまり期待していなかった
んですが、最新アルバムではシルヴィアンもまだまだやれる!とい
うことがわかって、うれしくなってしまいました。
nobody 24
はじめてペドロ・コスタを観たとき、といっても後にも先にもそれきりなのだが、勿論『ヴァンダの部屋』だ、ガレルより“遅い”作家が出てきたと思ってびっくりした。
そのガレルが、デプレシャンを観ていると知ってさらに驚いた。だって、デプレシャンはモーツアルトのように軽やかだし、そのカメラの切り替しの速さは、目まぐるしく飛び交っている蛾を、まるで蛍光灯の光の下で追っているかのようなのだから。
本書と併せて、デプレシャンによるドヌーヴ論を読んだが、その才智はやはりドヌーヴの身体を通して、デプレシャン本人の洒脱さを伝えるものだった。
フィリップ・アズーリの言葉を文字通り、“重く”受け止めなくてはならない。私たちは泥のなかを這っているようなのだから。それでも重力というこの戒めを解いて、高みへと飛翔させるなにかを、私たちは“愛”と呼ばれるもののなかに求めるのでなければ、たとえそれが過去のものであっても、私たちはその“記憶”を引き継ぎ、“生きている”のであるから。
Dead Bees on a Cake
長い、長かった。88年の大傑作 "Secrets Of The Beehive" から12年。その間色々なプロジェクトで活動はしていたから、久し振りすぎる感じはあんまりしないが、それでもファンとしては待ちわびたソロ作品。
完全主義者デヴィッドの、じっくり、じっくり作り込まれた本作もまた、噛めば噛むほど味がでる傑作でしょう。彼独特の宗教的美的感覚はここに来てキリスト教からヒンドゥー教へ。しかしインドっぽさはまだちょっと小慣れてないかなって気もするが。
一つ苦言を呈するならば、デヴィッドも家族を持ち、年を取り、さすがに丸くなってきたかな、AORっぽい曲が増えてきたような。。。もちろん内省的な美しさはどの曲にも健在だけど。
Sleepwalkers
「Blemish」以降のオリジナル作品での孤高の実験精神と美しさを僕は今でも絶賛するが、一方でその静けさと緊張感故に、聴くシチュエーションが限られてしまっていたのも事実である。
本盤の場合、ここ10年程の音の成果を整理しなおしたものだが、オリジナルからより聴き易く手を加えられていたりして、他のレビュアーの方も触れられているとおり、単なる寄せ集めではなく一個の独立したアート・パッケージとして成立している。何よりも、この10年程の様々な名義での音楽的実験とデビの人生が全て「必然」として消化・蓄積され、本盤の「穏やかさ」に結晶しているという事実に僕は感動する。
なお、ジャケットはクリスタマス・クラウシュという女流写真家のセルフ・ポートレイト(!)で、一言で言い切ってしまうと若くて綺麗な時しかできないゴスな作風の人なのだが、その儚さが暗さと美しさに同居した作品は本盤の枯れた音世界にある種の若々しさとエロティックさ、一度見たら忘れられない鮮烈な印象を添えてくれている。ナイス・アシストだ。(彼女の他作品は公式ページで公開されているので、興味のある方はkristamasで検索してみてください。)