100年インタビュー 小澤征爾 [DVD]
有働由美子アナウンサーが(わざと?)素人丸出しの質問を投げかけ、それに小沢征爾が答える、という2時間近い番組のDVD化。もうこれ以上平易に・丁寧には答えられないだろう、というほど真摯に答える小澤氏の話はどれも大変興味深かったが、こんな質問をされてイライラしないのかしら、とかなりハラハラする。しかしどうやら、慣れているようだった。終盤の、国立歌劇場の監督室でのインタビューは、緊張がほぐれたのか有働氏も小澤氏もすっかりくだけた物腰である。ホールでの演奏が小さな音で聴こえてきて、味わい深い雰囲気であった。
それにしても、クラシック音楽に興味のない人には、この長いインタビューはがまんできないだろう。何しろ、ほぼずっと二人の会話。休憩らしい映像はほんの少ししかないのである。だからいったいどれだけの人が、この番組を喜んで最後まで見たのだろう。一方、その番組のDVDを買うような人にとっては、言わずもがなの内容も多い。対象視聴者がマニア限定であれば、もっと専門的な聞き手を用意し、小澤氏も遠慮なく専門的な話をすればよかったわけである。結局、この作品の最大の意義は、元気な頃の小澤氏から彼の音楽観を聞き出して記録したことにある。もっとも、がまんさえすれば誰にでもわかりやすい番組を作った、という意味では、この作品は成功していると思う。
私がとくに感銘を受けたのは「個」の重要性についての話と、カラヤンから教わったという「invite」の技術とであった。どちらも音楽に限ったことではない。どんな話であるかはご覧になってのお楽しみであるが、若い世代を教育する立場にあって重要な考え方である。