サクソフォーンの芸術
世界最高のサクソフォーン奏者であるマルセル・ミュールと彼の一派による演奏が3枚のCDに収録されている。ディスク1にミュール、2にロンデックス、3にデファイエ四重奏団の演奏が録音されている。
ミュールの演奏は、録音状態が悪いのが残念であるが、70年近く経った今聴いてもなお素晴らしいサクソフォーンの演奏である。ミュールによって開拓されたクラシカルサクソフォーンの初期の美しい音色が、非常に印象的だ。サクソフォーン奏者ならば、おそらくこの音色に心を打たれるだろう。
ロンデックスは協奏曲しか収録されていない。この時代になると録音状態が良くなり、本来の音色の美しさが実感できる。ミュールに教えを受けただけあり、彼もまた素晴らしい演奏を収録している。
デファイエ四重奏団の演奏は、各曲における音楽の情熱性というものがひしひしと伝わってくるような名演奏だ。特にデザンクロの「四重奏曲」は、日本人の演奏と比べ物にならないくらい音が透き通っている。
サクソフォーン奏者ならば所有したいCDだ。評価をひとつ下げたのは、輸入版より収録曲が少ない所以である。
愛の喜び~魅惑のサクソフォーン
以前キングレコードから型番KICC64として販売されていた同名のCDを再発売したもの。以前のCDが廃盤になっていたため、1800円という安価で入手できるようになったのは嬉しい限り。
演奏しているのはパリ音楽院サクソフォン科前教授のダニエル・デファイエ(1922 - 2002)。クランポン社製の楽器を使用し、独自の美音と卓越した音楽性で一斉を風靡した伝説的な名手である。このCDでも編曲ものの小品を中心に彼の美しい音色を堪能することができる。現パリ音楽院教授ドゥラングルや日本の須川展也等々、現代の名手たちとの演奏の違いを聴き比べるのも一興。サクソフォンを吹く方なら持っていて損はない。