「ふるぎぬや」
この古着店には、客に行くべき理由がないと辿り着けない。

着物が好きで、和布が好きで、染めや仕立てが人の手仕事から
離れてしまうのが残念に思っていました。絵の綺麗なこの作家
の新しいシリーズが着物にまつわるお話でとても嬉しいです。
まるで、ひとつひとつの話しが、凝った着物を1枚1枚語るかの
ような作品です。

作品の中の、ことばの選び方も細やかで印象的ですね。
いい古着は、いい記憶を持っている。

大叔母の羽織、母のおさがり、自前で初めて仕立てた一張羅。
和箪笥の引き出しから大切な着物たちの声が聞こえてきそうな、
心に懐かしい風が吹きとおるような読後感。着物好きでなくても
おすすめです。