社員皆経営者、というポリシーや
「自ら機会を創り、機会によってみずからを変えよ」という社是は
ビジネスにおいて普遍的ともいえる考え方ではないだろうか。

本書は江副氏の「回顧録」的な体裁で書かれているので、
いわゆるビジネス書よりも読みやすく、感情移入しやすいのが特徴といえる。
だからこそ、今をときめく一流企業も、全ては偉大なる経営者の
熱意と粘り強さと行動によって築きあげられた「ベンチャー企業」であるとわかる。

そして、彼個人の経営哲学もわかりやすく解説されている。
「健全な赤字事業を常に作っておく」
「失敗に対して寛容である文化を醸成すること」
「ほめるときは皆の前で大声で、叱るときは個別に、しかもすぐに」
「経営者と社員の立場を近くにしておくこと」

今の日本に足りないものの多くが、江副氏が築いたリクルートという会社の
哲学に含まれている気がする。

失敗を恐れない空気（むしろ自ら失敗するくらいの勢い）、
失敗を全体で共有する空気、強い熱意と具体的なビジョン。
言葉だけでない「多様性」を受け入れる。
経営者の思いを単純なメッセージにして複数人で共有できる風土作り、
いずれも起業して成功することへの絶対条件だと感じる。

しかし、この本を読んで感じたのは、やはり「人の和の力の偉大さ」である。
彼はずっと、会社の内外を問わずに多くの人と関係を深め、
協力をあおいだり、議論して負けたりしている。
その人脈の広さがなければ、決して成功はなしえなかったであろう。

やはり、同じ目的を共有した有能な集団を作ることが何よりも大事なのだと実感させられる。

折に触れて、何度も読み返したい良書。