クリント・イーストウッドが名監督として、世俗的に評価されたのは「許されざる者」からである事はよく知られているが、今作は、その直前作として撮られたＢ級アクション。当時、まだ、日本やフランスで一部熱烈な支持を受けていた以外、特にアメリカ国内の著名な評論家やマス・メディアからは、殆ど黙殺、冷笑されていた存在だった。
今作は、「ダーティハリー」シリーズや「サンダーボルト」でも上手くさばいていた若い世代とのコンビ・ワークに、人生の先輩として新米を指導、教示していくと言う「ハートブレイク・リッジ」や記憶に新しい「グラントリノ」のシチュエーションが生かされている。
とは言え、主役はチャーリー・シーン演じる幼少期に誤って弟を事故死させてしまった罪悪感を持つ新米刑事であって、映画は、シーンがトラウマを克服し、人間として成長していく様を重視して描いている。アクションも、シーンを軸に展開、つまり、イーストウッドは、映画同様、後輩に花を持たせているのだ。
正直、パターン化された展開で、映画的に刺激的と言う訳でもないが、手堅く、ウエルメイドに纏めてみましたと、職人技を感じさせる作品。
この後、若くして亡くなったラウル・ジュリアと、久しぶりにイーストウッドが女性にいたぶられるエロチックなＳＭシーンがいかすソニア・ブラガの、悪役ふたりも印象的だ。