ネタバレを含みます。ご注意下さい。

前作での伏線から、今回はどんな展開になるのだろうとわくわくしながら読んだのですが、読んでいくうちにうん？となり、すっきりしないまま終わってしまいました。思わず、え、これで終わり？と首を傾げてしまうレベル。
自分の読解力がおかしくないなら、なんとこれで完結です・・・。この作品より後に出た作者さんの別作で3部作であると明示（作品名自体ははっきりとは書いてありませんが、読めばこの作品だと分かる文です）してあったので間違いないでしょう。
そんな偽悪の王の3冊目ですが、打ち切り漫画並みの駆け足展開でした。

まず、登場人物から。
今回の展開だけを見ても、リリアではなく表紙を飾っているメルの方がヒロインと思えてしまうような展開でした。正直、リリアの性格がツンデレとありきたりであるため、実はけっこうな過去を持っていたメルにどう見てもヒロインの座を奪われてます。
そして1巻から登場しているオスカー。魔法の腕前が高いイケメン風紀員という設定なのですが、結局最後まで必要なキャラだったのか分かりませんでした。主人公のライバルといえるほど絡みはなく、かといってストーリー上重大な役割を持っているわけでもなく、時たまぽっと登場しては大したことをするわけでもなく出番を終えていくという、いてもいなくても大差ないと思ってしまうキャラでした。

次に話の根幹ともいえる間導具。
物語の重要な鍵として5つの魔導具があり、そのうちの1つを手に入れることが主人公レインの目的なのですが、それ以外の魔導具の1つが前2作で登場し、それによって事件が引き起こされていたことから、今回もいずれかの魔導具が登場して騒ぎを起こすのだと思っていましたが、今回はレインが求めるものがさらりと登場し、他の魔導具は保管されているのを見せて説明して終わり。1冊ごとにそれぞれの魔導具を中心とした物語を展開するのだと思っていただけに、これにはがっかりです。

以上から、構想に対してまったく尺が足りてないのに、無理矢理詰め込んで終わらせたというのが率直な感想でしょうか。
1冊ごとに魔導具を1つ出し、全5巻くらいにしてじっくりと登場人物を掘り下げながら話を展開していけばもっといい作品になった思うだけに、残念でなりません。

蛇足ですが、1巻のイラストに釣られて購入した身としては、この3巻の挿絵は違和感がとんでもないです。正直、同じ絵師が描いたの？と思うほどヒロインの3人は違って見えます。実際に表紙絵を見比べてみても、巻を重ねるにつれてキャラの目が肥大化していっているのが分かると思います。