1999年のアメリカ映画、　カラーワイドで189分という大長編ドラマ、

本作は世紀末を代表する大群像劇の大傑作です、
映画を数回に分けて鑑賞する癖のある鑑賞者はあまりの面白さに途中で見るのを止められなく可能性があるので時間の余裕を確認してから再生するのがベストです、
ちなみに私は今回は、30分、60分、三度目に残り全部と三分割で鑑賞した、

本ディスクはリマスターはされていないので映像そのものは普通だが、　音圧が高く他のディスクに比べてすこし大きな音が再生できる点が買いです、
それというのも本作のクライマックスで連続する爆音が物語の核になるからです、
大げさに表現すれば大群像劇のたくさんの登場人物達全員が爆音の前座といってもいい物語、
再生環境によっては突然、予想外の爆音が鳴り始めるのに驚くかもしれないので心しての再生を奨めます、

物語は、まったくのあかの他人同士のようでありながら、登場人物全員がどこかで関係性を持ち合っていたという偶然性の奇妙さを圧力の強い演出・撮影・編集・音楽で畳み掛けるように語りつくす素晴らしさ、
予告編で多人数の人間関係が説明されているので、初見の人は予告編から見るのもいいでしょう、

本作は「それでも人生は棄てたものではない」という高らかな人生讃歌映画、
誰が主演でもなく登場人物の誰に感情移入してもそれぞれに違った感想をもって何度でも興味の赴くままに再鑑賞できるディスク購入の価値がある作品だと思う、

｢ベンジャミン・バトン」は似たような人生讃歌長編映画だと思うが、　「ベンジャミン・バトン」の鑑賞後の爽やかさのようなものは本作には感じない、
本作がファンタジーではなく、よりリアルで等身大風の現在の人物達を描写したために、身につまされる感情が強く刺激されて苦味が沸くからだ、

以下蛇足、

それが偶然なのか？と首を傾げたくなるような事象が頻繁に起きるのが世の常、
本作冒頭で描写される三つの事件がそれを象徴しているわけだが、　それをわれわれの先祖は縁起が良い、縁起が悪いと呼んだのだ、
偶然性の神秘さは直接に信仰に結びつく、
自身の傲慢さをたしなめるためにあえて縁起を担ぐ冷静さが信仰に結びついたともいえる、
それは全世界共通だろう、
おそらくユングは偶然を出来る限り自然科学としてシンクロニシティの呼称で語りたかったのだと思う、
すでにユングから一世紀、　21世紀の我々は歴史が積み重ねた知恵としての偶然の一致(縁起)と信仰の重要さを正面から賞賛していいはずなのだ、
本作に一つだけ物足りない部分があるとすれば、登場人物達のキリスト教に対する姿勢描写不足だと思う、