小惑星探査機はやぶさの生還を報道で知ったとき、久々に言い知れぬ感動を味わった。日本らしい勝ち方だったからかもしれない。満身創痍、じつは負けっぱなしなのだが、命ある姿を親に見せに帰って来られたこと、それだけで私たちは喜ぶ民族なのだ。
しかし、この喜びの背後にある地道な努力や日本ならではの技術の開発がいっそう深い喜びにしてくれるのだ。プライドという喜びに。
イオンエンジンというエコな新技術、1ヵ月以上もの間宇宙の迷子になっていたはやぶさをキャッチした精神力、組織力、小惑星イトカワに着地してサンプルを採取して地球に帰還させるという高度にして緻密な知性、塊を打ち込みその舞い上がる粉塵を収集するという発想、神道や仏教への日本人なりの信仰心・・・。世界中どこにもない日本独自の能力の結集による偉業の達成にわたしたちは明日を生きていくための力をもらった。

日本のロケット開発は、何度も何度も失敗の連続で、時にはマスコミに叩かれ、その嵐にもまれながらも少しずつ進展してきた。だから、今回の成功は喜びが倍増だ。これはつかの間の成功で、今後また失敗を繰り返すことになるかもしれない。この成功も紙一重のところだろう。イオンエンジンの不調。しっかりとしたサンプル回収の失敗。ひょっとしたら、はやぶさの業績は日本人だけが喜んでいるものではないか、との思いもある。けれど、まずは、またステップを1つ昇ったのだ。
本画は地味だった。けれど、それは大人の映画だったからのようだ。くたびれてきた中年男たちの再生のための映画だったような気がする。むしろ本画を若い人たち、子どもたちが飽きずに最後まで観れたとしたら、その人たちが素晴らしい。

「ボロを着たマリリンモンロー」

日本はこれで歴史を刻んできたのだ。