上北ふたご作「プリキュアコレクション」の「フレッシュプリキュア!」は、作者の筆の力の入れ方がまさに「神」といった具合である。
上北ふたご本人がせつなに相当思い入れがあるようなので、せつなの描写には作者の魂と全神経そのものが筆のタッチや線に相当強く込められているのが分かる。
物語の内容は大まかにいうとテレビ版を大きく端折ったような感じではあるが、テレビ版と異なるところも少なくないし、最終話のページの使い方やコマ割りがかなりプツンとした感じになったりしているが、漫画版本編そのものはまさに「せつなのために存在する」といっても過言ではない出来具合で、その「神」の完成度に当たって満足度は非常に高い。
最初はプリキュアの存在に虫酸が走り、不幸を集めてプリキュアを倒すことだけがイースとしてメビウスに応えるためだけの役目だったのが、ラブとの交流・ピーチとの戦いの末揺れ動く自分。ピーチ対イースの一騎打ちでピーチは一切イースを攻撃しないのはなぜか・イースとしての寿命がきてパッションに転生した後も「東せつな」としては自分を犠牲にして贖罪の日々・インフィニティと化しノーザに奪われたシフォンを取り戻すために一人で占いの館に向かう、どれも重く緻密なタッチで読み応えがある。上北ふたご自身に非常に思い入れのあるキャラクターだからこそ、氏の筆に魂を込める力量がいかんなく発揮されているのだ。

せつなに作者の魂と心血が全て注がれている分、特にブッキーの出番は相対的に見て低いし、タルトとシフォン・カオルちゃんの出番もテレビ版より少ない。
しかし、美希たんの登場は絶対に見逃してはならない。区民プールでの水着姿→ダビデ型ナケワメーケが暴れる→和希が倒れ危機が迫る→携帯電話がリンクルンになり水着姿から初変身と、テレビ版とは完全に異なるベリーのデビューだ。

「フレッシュプリキュア!」ではダンスを本格的に用いたこともあって、漫画版劇中でも至る所にエンディングテーマ曲「You make me happy!」「H@ppy together!!!」の歌詞がダンスシーンのBGMとして頻繁に用いられている。だから、最終ページの奥付にJASRAC許諾番号がきちんと記されているのに気付いた人も少なくないだろう。

作者の魂と心血の注ぎ具合を「神」とも呼んでも過言ではないこの単行本一冊、フレプリファンではあってもせつなファンではない人も、この一冊はじっくり読んでおいて損はない。コミック単行本では、映画フレプリアニメコミックとは全く違った「味」であり、双方読み比べて見て楽しむのもフレプリファンとしていいものだ。