がん患者のサポートグループを通して出会った二人のティーンネージャー、HazelとAugustus。甲状腺がんが肺に転移して酸素ボンベが離せないHazelと、片足を失うことで骨肉腫を克服したハンサムなAugustus。長くは生きれないだろうと思うHazelは健康になった彼を傷つけないようにと自分のまわりに壁を作るが、Augustusはピュアな気持ちをストレートに伝える事で、そんな彼女の壁を取り壊してゆく。彼女の好きな本への思いを共有しながら次第に距離を縮めてゆく二人。途中で終わってしまっているこの本の終わりを知りたいというHazelの願いを叶えようと、Augustusは著者に会うためのアムステルダム行きを計画する。そこで物語はまったく違う展開を見せる。

人生は喜びだけでも悲しみだけでもない。がんとの苦しい戦いにあっても、ユーモアたっぷりのジョークに笑うこともあれば、がんに冒された自分の体を愛しく思う瞬間もある。
心が凍り付くような夜中のベルに怯え、星の味がするシャンペンに微笑み、涙でページが見えなくなって何度も立ち止まらなくてはならなかったけれど、HazelとAugustusとともに、私も様々な感情の旅をした。「Okay」という短い言葉が二人にもつ意味、Hazelを「Hazel Grace」と二つの名前で呼びつづけるAugustus。そして限りある時間のなかに息づく無限大。

人はこの世に生まれた意味を求め、この世に生きた証を残したいと思う。でも誰もが歴史に名を刻む事はできない。先逝くものの多くができることといえば、彼らを愛してくれた人の心に大きな穴をあけ傷を残してゆくことだけだ。AugustusはHazelに傷つけられるなら光栄であると思い、そして彼女も同じように思ってくれることを願う。

生きていれば傷つく事は避けられないし、誰かを愛しそして先に旅立つことで相手を傷つけることも避けられないけれど、「誰に傷つけられるか」の選択にはその余地がある。

本も同じだと私は思う。この本を読むという選択をして本当によかったと心から言える。
この切なく美しい物語が心に残した傷を、私はとても愛しく大切に思うから。