これはゲームではなく読み物であり、さらに言うならば読み物から観る物へとどう変えるかを試したものだろう。

とりあえずこれから購入しようとする人への注意点として、ギャルゲーという類ではないことだけ納得したうえで考慮してほしい。
TYPE-MOON作品のファンならばそのあたりは心配ないのだろうが、新しく手に取る人に向けて。

テキスト量自体は公式HPでも明記されている通り大ボリュームだった同社の他のゲームと比べると少ない感はある。
本編自体には選択肢もないのがその感覚をさらに大きなものにしているだろう。
確かに文字表示を最速にして、文字が表示されたら最速で読んでクリッククリックしていくと物足りなさはある。
しかし、実際のところこの作品の肝はデフォルトの文字表示速度、それが早すぎるなら少し遅くしたうえで、オートで進めることにあるのだと思う。

基本的にノベルゲームというのは小説と同じく情景描写や心理描写を入れつつ、ここぞという場面をイベント絵にして臨場感を出してきたものではないかなと考える。
ところがこの作品ではそれらの描写を一部背景に任せ、かつ出来うる限りイベント絵にする場面を拡大していこうと試みていた。
そのため、たとえば人物の何気ない仕草であったり、その場面で視覚的に何が起こっているのかの説明がなくなるという、想像力を奪ってしまう
読み物としては破綻するモノになるが、しかし観る物として進化させられないかというスタッフの挑戦が感じられたように思う。

内容についてはあまり語らない、というより語ると楽しみを奪ってしまうことになると思う。
とあるキャラの設定が奈須きのこの作品的によくあるような設定ではあるが、人間の見せ場もやはりほしいのだろう。

もともとは3部作で、1部しか完成していなかったという「魔法使いの夜」
個人的にはこのままの終わりで、それぞれの結末を色々と予測するのも楽しいいい終わり方だったと思う。
ただ、おまけシナリオで出てきたキャラは多分まだ構想段階のキャラなのだろうか？
面白いキャラだっただけに、もしも完結させるのなら頑張ってほしい作品である。