「大歓声に包まれて立つメジャーのマウンド、あらゆる国の文化、そこで生きる人たち。野球は僕に、挑戦しなければ見ることのできない景色をたくさん見せてくれました」。

日本プロ野球を経験しないでメジャーリーグ入りを果たした初の日本人選手であり、メジャー・リーグで16勝を挙げたマック鈴木氏の自叙伝。しつけの厳しい家に育って、かなりやんちゃなこともした子供時代。スポーツの才能を開花させ、特待生として高校に入ったが、暴行事件を起こして中退し、アメリカへ行く。

1Aで洗濯やバッティング投手など忙しく雑用係をつとめながら、そのうちプレーの才能をすこしづつ認められ、マイナー契約。さらにチャンスをつかんでメジャーに昇格する。最初にメジャーリーグのキャンプに呼ばれたあたりから肩がおかしくなっていたというのは知らなかった。それさえなければ、もっと勝てたんじゃないかと思う。

日本球界でもプレーしたが、コーチの指導をまともに受けすぎてフォームがバラバラになって結果を残せず。その後、ドミニカ、メキシコ、台湾、ベネズエラ、アメリカ、カナダと各国でプレー。本当に、波乱万丈の野球人生である。

関西独立リーグの監督のために招かれた淡路島が気に入って、退団後もそのまま住んでいるという。「SUNRISE MAC GYM」の監修をしたり、TVのMLB解説のために東京へ飛んだり、少年野球の「MAC杯」の開催や、子供たちの指導などをしているという。

全体的に平易に書かれていて、読みやすい。終盤では、日本の野球や子供たちの指導のあり方、MLBを目標にする選手が増えたことに対しての意見を述べている。さすがに海外でいろいろ経験しているだけあって、米国の野球事情や、メジャーリーグまでの道のりが大変厳しいものであることを語る言葉には重みがあった。