これまでに読んだ著者の本は本書で５冊目。
けっして野村監督の熱烈なファンというわけではないが、野球ファンとしてなぜかついつい手が出てしまう。おそらく野球界広しといえど、著者ほど野球の本質を鋭く射抜く慧眼の持ち主は他に見当らないでしょう。あの選手、あの監督、あのプレーについてどう見て、どう考えているのかを少しでも知りたくなってしまう。
「同じ努力でなぜ結果に差がつくのか？」というコピーにあるように、努力が才能を著しく凌駕した「努力の天才」が言うことだけあって、深くうなずく所が少なくなかった。例えば、かつて甲子園のライバルだったマー君に差をつけられた斎藤祐樹。彼ほどクレバーな選手が誤った努力をして伸び悩んでいる可能性を、その具体的な内容を含め指摘したくだりはことに興味深いものがあった。正しい努力とは何か？間違った努力とは何か？著者はグランドの天才たちの「結果を出した努力」「結果の出なかった努力」を鮮やかな手つきでものの見事に解体してみせる。個人的に斎藤ファンなので、関係者の方にも読んでいただきたい。
同時に野村さんは、あの腹に響く低い声で読者に問いかけてもいる気がする。あなたがいましている努力は果たして正しい方向へ向いているのか、今一度疑ってみよ、と。