入門講座 2万5000分の1地図の読み方 (Be‐pal books)
地形図の読み方が実体験に基づいた具体的事例で解説されている本書は地図関連の本としては類書を見ないユニークな一冊。内容は非常に実践的で役に立つ。ただ5章の磁北線の引き方には疑問が残る。分度器を使って一本引いてその平行線を引くという方法は誤差が累積しやすいし、第一分度器という小中学生の文具をどれだけの人が持っているだろうか?三角関数(tan)を使って地図上で西に何センチずれるかを計算して磁北線を引くほうが合理的だと思うが。
GPSの利用に関してはまったく否定的なのは疑問が残る。執筆当時はそうであったかもしれないが現在は精度も実用上十分である。GPSで得られた緯度、経度を基に地図上で位置を特定するのもマップポインターを使えば1秒単位(20-30m)で可能である。視界の利かないガスの中や夜間ではGPSは有効だろう。
若干の疑問も残るが全体としては大変役に立つ本である。
リラクシング・ピアノ~宮崎駿コレクション
エンヤのサウンドは曲を何度も重ね撮りして響きを持たせることにより独特なヒーリング効果を生んでいる。そのため1曲のレコーディングには数ヶ月を要するようだ。
それと似たように本アルバムには独特な響きがある。
ニューカレドニア諸島のウベア島にあるサンジョセフ教会の聖堂の中でのピアノ演奏を生録したのが本アルバムだ。
「リラクシング・ピアノ」と銘打っているが、1曲目の「千と千尋の神隠し(いつも何度でも)」を車の運転中に大音量で聴いていたら軽いトランス状態をおぼえた。
宮崎アニメはファンが多いので主題歌を集めたり、オルゴールにしたりするオムニバスアルバムが多いが、それらとは一線を画している。
ピアノ演奏に合わせた編曲も素晴らしい。
因みに編曲と演奏を行っているは長年にわたり数多くのヒーリング・ミュージックを発表してきた作曲家広橋真紀子。
ヒーリングミュージックの第一人者、聖堂、ピアノと久石サウンドの見事な融合をみることができる。
ジャケットもシンプルながら絵の枠の部分に凹凸を持たせるなど凝った作りだ。
長靴猫を連想させるような猫のイラストも可愛い。
宮崎氏がまだ無名な頃に、彼のアイディアを爆発させたのが東宝マンガ映画「長靴をはいた猫」だ。宮崎氏の原点ともいえる長靴猫が表紙で「ようこそ!」といったようなポーズをとっているのは微笑ましい。
これだけの内容で1600円とは非常に安く感じる。
宮崎ファンならずとも、癒しを求めている人へは強くお薦めできる1枚。
学校では教えてくれない風景スケッチの法則―不透明水彩絵の具ガッシュを使って描く
著者はアニメ製作会社ジブリの美術(背景イラスト)出身で「ハウルの動く城 [DVD]」や「崖の上のポニョ [DVD]」等を手がけた方。そのため芸術畑の風景画家の教則本と違う点が多くとても役立つ。
他の本より優れている所(1)透明水彩ではなく不透明水彩ガッシュ(いわゆる学童用水彩絵具と同じもの)を薦めていて、ガッシュを用いて描かれている。単に筆者が使っていたからではなく、なぜガッシュが良いのかをちゃんと説明している。またガッシュでも透明水彩のように描くこともできることを実例で見せている。
(2)風景スケッチ教則本にある「よく観察して描く」というスケッチの基本だけに終わらない。単に風景を見たままに描くのではなく「絵画」に変換する際に使われる効果的な演出(例:雲の配置)について書かれている。
(3)風景描写に欠かせない遠近法はもちろん、影の法則、樹木の枝ぶりの法則などの説明がある。これを知っていれば細かい部分に目が行ってしまい風景絵全体のバランスが崩れるということなく描けるようになる。また、風景を前にしたスケッチの進み方や所要時間が短くなる。
(4)筆の使い方がちゃんと写真入りで書いてある。画材店へ行くと「こういう筆致のためにはこの筆、こういう線にはこの筆…」とやたら筆をたくさんそろえる必要があるかのようにすすめられる。本書では基本の中太丸筆1本で広い面塗りから点描、細い線までどのように筆の穂先を揃え絵具を含ませ紙にあてて描くのかがわかるように写真で解説されている。
(4)の1本の筆で何でも描くというのはアニメ背景現場では昔からある技法なのだが、趣味家向け水彩本では全く紹介されていなかったので、この本に載っていることはとても有意義。
法則はどれも実例や図、絵を使いながらわかりやすく説明されている。これを発展させればアニメ背景のように実際には見ていない風景や想像上の風景を描いたり、写真資料をもとに違う天気や時間の絵も描けるので、イラストレーターや漫画家にも有用。
余談だが、三原色で描く風景スケッチ (朝日カルチャーセンター講座シリーズ)の著者が書いているが、からりとした晴天のぬけるような青空は透明水彩絵具では再現できないとして、透明水彩とガッシュを併用した作例を紹介している。本書はそれに応えるかのように、ガッシュを用いて青空と立体的な雲のの描き方も丁寧に解説している。
弦楽四重奏 名作アニメカルテット <宮崎駿監督作品> 松原幸広 編 ~弦楽合奏用コントラバスパート譜付~
弦楽器を熟知しているから、各パートに必ず『聴かせどころ』を作ってあります。弾き込むほどに味が出てきて誰にでも好かれる事請け合いです。自分のライブラリーには無くてはならないシリーズの一つです。