スペードの女王・ベールキン物語 (岩波文庫)
読んでいてヒタスラ心地の良いエンターテイメント、逆に言えば過激でなくちゃ感じれない人には不向きな作品である。シェイクスピアにも通づる物語という物の本来の面白さ、ストーリーを練るとは一体どういうことなのか?「まだ俺はこういう物を楽しめたのか」とこの本を握り締めてツブやいてしまった。
タルコフスキーが絶賛、アンドレ・ジッドが絶賛、そしてドストエフスキーが賛美した究極の基本的エンターテイメント。舞台にしても、映画にしても、TVドラマにしても絶対的に面白そうな愛想の良い不朽の名作。こういう物を楽しめる余裕のある人生って良いと思います。
田園交響楽 (新潮文庫)
盲目で言葉もろくに話せぬ孤児の少女を、
家族持ちの牧師が自宅へ連れ帰る、というところから話が始まる。
牧師は少女を教育することに喜びを覚え、絆を深めてゆくものの、
少女が視力を回復する可能性が生じるにおんで、或る不安を抱くようになる。そして……。
短い物語だが、良作だと思う。
「盲が盲を導いたらどうなるか?」という主題とは別に、恋愛小説の風情も醸し出されている。
牧師の心境も少女の可愛らしさも、かなり親しみ易い。そして牧師の奥さんには同情せざるを得ない。
私は、少女の、
「あなたが授けてくださる幸福は、何から何まであたしの無知の上に築かれているような気がしますの」
という言葉が心に残った。