リートフェルトの建築
デ・ステイルのメンバーにして、レッド・アンド・ブルーチェアー、そしてユトレヒトにあるシュレーダー邸で有名なオランダの建築家リートフェルトの作品をほぼ生涯にわたって紹介した作品集。これまでシュレーダー邸のみで語られることの多かったリートフェルトの建築がオランダ国内はもとよりカリブ海のオランダ領まで渉猟してまとめられている。
リートフェルトの研究者である著者(奥佳弥)が長年の蓄積をもとにきっちりまとめた解説は読み応え十分。また、リートフェルト建築の鮮やかな色彩や空間のあり方をやわらかくかつ的確にとらえたキム・ズワルツの写真もすばらしいし、なによりリートフェルトの世界を本の世界に定着させたような紙面デザイン、造本デザインがよい。オブジェとしても手元においておきたくなる一冊。
建築に詳しい友人に聞くと、リートフェルトの作品をここまで一貫してまとめた作品集はヨーロッパにもないそうで、これが世界初だろうとのこと。そんな作品集が、適切な専門家と写真家、そして定評のある出版社によって日本から刊行されたことを喜びたい。TOTO出版の本は、海外の書店でもよく見かけるので、きっとこの本もパリ・ポンピドー・センターやMOMAでも売れているのでは。(ちなみに本書の本文・キャプションとも全て英語・日本語のバイリンガル表記) 即買いして損はないですよ。
※後日の追記 なお、ロンドンのテート・モダン美術館のミュージアムショップでは平積みで売られているのが確認されています。
リートフェルト シュレーダー・ハウス−1923 オランダ (World Architecture)
リートフェルト展が開催されたのは2004年だったが、そのリートフェルトのユネスコ世界遺産のシュレーダー邸の本である。A5版の小ぶりで67ページの軽い本だ。しかし、全ページ、カラーでこのシュレーダー邸だけの本なのである。
写真は建築写真家の宮本和義氏、解説は建築家・栗田 仁氏だ。
大きな写真は見開き、十分な迫力だ。とにかく、一つの小さな住宅が縦横無尽に写真になっているという感じなのだ。
「モンドリアンの絵画を立体に翻訳した住まい」と題する栗田 仁氏の解説も、長崎出島とリートフェルトの関係から、日本民家の「田の字型平面」をシュレーダー邸に見る等、ユニークな視点から面白く語られている。
全文、写真解説も含めて英訳が併記され、なかなか国際的な本なのだ。
このバナナブックスは、ワールドアーキテクチュアーシリーズとして世界の名建築をシリーズとしてつ刊行されるとのことだが、気軽に手に取れる楽しみな建築本である。