八人との対話 (文春文庫)
本書はタイトルの通り、司馬さんが著名な作家8名との対話を行った際の対談集である。
単行本は93年に、文庫版は96年に刊行された。それぞれの対談は76年から92年までの間に行われており、主に雑誌文藝春秋に掲載されたものをまとめたものである。
その対談者ごとに展開される話題の豊富さに圧倒される。
話は多岐にわたり、細に分け入り、息つく間もなく読み終えた。
「結局、われわれは自分自身を改良してゆくしかない。人類の仲間たちに貢献し、自分自身の社会にも被害を与えない。
そういう社会を作るには、相当しんどい民族であることは確かですな。(司馬)P54-55」
そういう気分の中で、歴史を通じて現代に警鐘を鳴らし続ける姿勢をそこかしこに垣間見ることができる。
文中「これは」と思える発言がたくさんあるので、閉塞日本を考えたい人にはオススメの書ではないだろうか。
えかきのチャーリー ひみつのかべ (こどもプレス)
何が秘密なのかといえば、そこに描いたことが実現してしまうこと。
絵描きのチャーリーが、壁をキャンバスがわりにしてしまったのは、
まずしくて紙さえ手に入らないため。ハラペコでおいしそうな料理を
描くのみならず、そこへヤンチャな2人組の小人まで加えたところに、
画家ならではのこだわりを感じました。実はこれがポイント。
後で帰宅したチャーリーは、絵の中の肉が部屋にころがっているのを発見。
その秘密を知った彼は、自分の好きなものを、つぎつぎと壁の絵に付け足し
ていきます。絵が実際に動き出す話は、特にめずらしくありませんが、
この作品の場合、描き手の力が問われますね。絵本の中に登場する絵でありながら
絵とは意識させないことが求められるのですから。これがダビンチのように
リアルな壁画だと不気味だし、ピカソのように前衛的だと料理の味もトンチンカン
になりそうだ。その点、山本さんの絵はちょうどよいと思います。
チャーリーの絵筆は緑豊かな町や美女まで生み出し、最後はムフッとなります。
ヤマタケTVヒッツ!~山下毅雄TVテーマ作品集~
同時期にビクターから出た初CD化曲満載の「ヤマタケ・フォーエバー」に較べると普通のベスト盤です。音や選曲に定評のあるテイチク・クロニクルシリーズにしては無難な選曲で、既に「早すぎた奇才・山下毅雄の全貌」シリーズで聞けるものばかり。初心者向けと言っていいでしょう。しかし見過ごしてはいけません、実は貴重な音源も数曲入っているのです! 「ジャイアントロボ」2番抜きショート・バージョン、「怪盗ラレロ」のセリフ入り別バージョン、「時間ですよ〜東京下町あたり」等は多分、初CD化。それになんといっても「佐武と市捕物控」がテイチク・レコーディング・オーケストラによる別バージョンで、全盛期のヤマタケの口笛に伊集加代子の艶っぽいスキャットがばっちりからむ素晴らしい出来! マニアの方はこれ1曲だけでも買う価値あり、と言っておきましょう。